ADB、ベトナムの成長率が3年連続で東南アジア最高

ADBによるアジア・東南アジアの国々のGDP成長率の予測

ADB、ベトナムの成長率が3年連続で東南アジア最高

2021年第1四半期のFDI認可額(ベトナム投資)は、前年同期比17.8%増で、1位シンガポール、2位日本、続いて韓国、中国、香港、米国の順となっている。

ADBによると、2021年のベトナムのGDP成長率は約6.7%であり、シンガポールとマレーシアの6.0%、フィリピンとインドネシアの4.5%、タイの3%と続く。

ADBは、2022年にベトナムの経済成長率も4月時点では約7%予測で、引き続き東南アジア1位。以降マレーシアの5.7%、フィリピンの5.5%、インドネシアの5%、タイの4.5%、シンガポールの4.1%と予測している。

この安定的且つ高い経済成長率は、昨年新型コロナウイルスの押さえ込みに大きな影響を与えた政府による効果的な防疫対策および経済・社会開発への支援の結果として考えられる。2020年ベトナムがプラス2.9%成長を維持する中で、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンはマイナス2.1%~9.6%成長になると予測されている。

ベトナムは3年連続で東南アジアの経済成長をリードし、ASEAN主要6カ国の(2020~2022まで)3年間のGDP成長率を高い順にみると、ベトナム17.78%、インドネシア7.42%、マレーシア5.77%、シンガポール4.39%、タイ1.07%、フィリピン-0.34%となる。

一般的にアジアでは、ベトナムの経済成長は3年連続でトップ3にしているが、上述の3年間の成長率合計から見てもアジアが最も高い値を示している。 高い順に、ベトナム17.78%、中国16.67%、タジキスタン15.76%、インド約9.27%となる。

また、ベトナムの2.9%のGDP成長率は、この1年間で世界的に見ても高水準の1つであった。今年のベトナム経済の主な成長軸として、輸出志向型の加工・製造業を始めする工業が挙げられ、投資の増加と商業の拡大も期待されている。

具体的には、2021年に工業業界は9.5%増、GDP成長率に3.5ポイントを貢献すると見込んでいる。 同業界は、2021年の第1四半期に好調なスタートを切り、前年同期比6.3%増加したという。

ADBによるアジア・東南アジアの国々のGDP成長率の予測
ADBによるアジア・東南アジアの国々のGDP成長率の予測

農業の成長率は、積極的な輸出促進活動や、構造再編(稲作から高い付加価値のある工芸作物や家畜への移行など)や民間部門の勢いのおかげで、2019年の2%から2.7%に増加した。

ADBのレポートは、深刻な洪水と干ばつや塩害の増加、そして外需の急激な減少の中での農業による昨年のGDP成長率に貢献した0.4ポイントは、非常に健闘したと述べている。

更に、ADBのチーフエコノミストによると、投資の増加も今年と来年の主要な成長の軸となると述べる。 COVID-19抑え込みの成功に加えて、規制上の障壁を軽減した2021年1月より改正投資法の施行も外資誘致を促進することが期待されている。

ベトナムへのFDI認可額(ベトナム投資)は、2021年の第1四半期で前年同期比17.8%増となった。 社会全体の総金融資本の成長は低金利と公共支出の増加に触媒され、大幅に増加した民間投資によって引き続き後押しされる。 その中で大きな割合を占める国は米国、日本、韓国、シンガポールなどである。

更に、投資環境を改善するための改革と主要先進国との自由貿易協定(FTA)15ヶ国間の締結は経済成長の勢いを維持させている。 2021年の第1四半期の貿易黒字20億ドルで、ベトナムの商品輸出は今年と来年で8%増加するとの見通しを示した。

ベトナムの2021年業界別成長率予測
ベトナムの2021年業界別成長率予測

その他の前向きな見通しとして、サービス業界の成長率が2021年に6%に回復し、GDPに2.3ポイントを貢献すると予測される。この成長の要因はデジタルシフトやコロナワクチンへの支出、ビジネスの信頼性向上や低金利等にあると考えられる。

政府が2021年に主要なインフラプロジェクトの実施を加速し続けるのは建設業界の急速な発展を支援し、低金利も不動産工事需要を刺激するだろう。

購買管理指数は2019年3月には最高水準となった53.6%上昇した。 個人消費は民間投資や低インフレと並行して回復すると予測される。 2021年第1四半期の小売が5.1%増加したのは、消費者信頼感の回復を示しているだろう。

企業信頼感の上昇は、調査対象の企業の80%が2021年の経営状況についてより良くなるかバランスが保たれると想定したという2020年12月の企業調査に反映しているだろう。

2020年の金利引き下げと企業の信用需要の回復に支えられて2021年には信用の伸びも期待できるだろう。

ADBのレポートにより、結論として、アジア太平洋地域45か国全体では、2021年の成長率が7.3%となる。この率は、前回予測の6.8%を上回っているが、昨年の予測より0.2%減少している。.

ホーチミン市の一角。写真:ADB
ホーチミン市の一角。写真:ADB

ADBは、進行中のコロナワクチン接種キャンペーンおよび世界的な輸出拡大を考慮してアジアの発展途上国の今年の成長率予測を引き上げた。

また、ADBはコロナウィルスの新規アウトブレイクが世界経済、その中でも特にアジアの回復を脅かす可能性についても警告した。「ベトナム投資は先行きが明るいが 数カ国の経済は、COVID-19とその感染抑え込みで、引き続き困難な状況にあるだろう」と、ADBは想定した。