新型コロナウイルス感染第4波を受けた社会隔離措置が解除された 10 月以降、 ベトナム各地の不動産市場が回復の兆しを見せている。業界関係者によると、不動産購入に対する市民や投資家の関心度は前年の同時期を上回っており、第4波が急拡大する前の5月に近い水準に戻っている。新規物件の販売も続々と開始されており、一時のロックダウン(都市封鎖)で凍り付いた市場を反転させようと関係者は意気込んでいる。
ビンホームズ・グランドパークの「レインボー」区画=11月26日、トゥードゥック市(ホーチミン市直属)
「完売に近い状態」、ホーチミン
ベトナム南部ホーチミン市中心部から車で約 40 分。トゥードゥック市(ホーチミン市直属)ロンビン街区とロンタインミー街区にまたがるエリアで、敷地面積計約271 ヘクタールに及ぶ広大な都市開発が進んでいる 。ベトナムの不動産開発大手ビンホームズが手掛けるスマートシティー ( 環境配慮型都市)「 ビンホームズ ・グランドパーク」だ。
ビンホームズは先月 22 日から 、 この一角にある高層マンション群「ビバリー」の販売を始めた。販売価格は1平方メートル当たり約 5,000 万ドン (約 25 万円)からで、 一般的とされる約 80 平方メートルの物件だと価格は約 40 億ドンになる 。 業界関係者は 「 ベトナムでも住宅ローンの借り入れができるようになり、中所得層以上ならばなんとか手が届く物件だ」と話す。販売戸数は区画全体で約 5,000 戸だ。
同社は同じ開発区内で 、 分譲第1期となる 2019 年7月に高層マンション「レインボー」、第2期として 20 年6月に「オリガミ」を発売。日本風の住宅を意識したオリガミでは、取引価格が発売当初より既に 20%以上上昇するなど、投資家からの注目度が高いという。
ビンホームズは 11 月 30 日、市内8カ所の映画館に販売代理店のスタッフ計数百人を集めた販売キックオフイベントを開催し 、 早期完売を目指してハッパを掛けた。
ビンホームズの日本向け販売代理店を務めるベトナム・グルーブ不動産の中河原大賀営業部長によると、会場では特別なプロモーション映像が上映され 、「 モチベーション向上を目的にした決起集会のようだった」という。同社は主に日本の個人投資家への物件紹介を担当しているが、22 日から順次販売が始まっている各棟は既に完売に近い状態。「 新型コロナウイルスによって暫定的に不動産市場が影響を受けているが、ベトナムの人口規模や経済成長率を見れば、まだまだ(不動産市場の)成長余地が感じられる」(中河原氏)と期待は大きい。
平均価格、前年水準上回る
ベトナムでオンラインの不動産仲介サービスを手掛けるバットドンサン ・ コム (Batdongsan.com) によると、北部ハノイ市、中部ダナン市、南部ホーチミン市の主要3都市では 10 月以降、 不動産購入に対する市民や投資家の関心度の回復が顕著になっている。新型コロナ感染第4波が急拡大する前の5月時点と比べると 、 ハノイ市ではほぼ 100%、 ホーチミン市は90%近くまで回復。ダナン市は4月時点と比べて 70%程度まで回復した。全ての種類の不動産で関心度は高まっており 、10 月の関心度は前月比で 55%、 前年同月比で8%上昇した。種類別では、一戸建てが前月比 78%、土地が 58%、コンドミニアムが 57%、それぞれ上昇した。 不動産価格も上昇傾向にあり、ハノイ市の今年1~10月の平均価格は前年同期比3%上昇し、ホーチミン市では4%上昇している。
22 年の市況は流動的
10 月以降の不動産市場は回復傾向にあるものの、新規感染者数の再増加や新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」などの懸念要素が重しとなる可能性を捨て切れない。専門家は来年の市況について、感染状況に応じて「2つのシナリオ」に分かれるとみているようだ。
不動産コンサルティング大手DKRAベトナムのディレクター、グエン・ホアン氏によると、年末から来年にかけてコロナ感染流行が落ち着いた場合は、来年前半に供給数と購買数が上昇し始め、後半はさらに市場が活発化すると予測。 一方で 、 複雑な感染状況が続く場合は、 来年の不動産市場が 、 今年第3四半期(7~9月)のような落ち込みに陥る可能性があると慎重な見方を
示す。
グローバル・インテグレーション・ビジネス・コンサルタンツ(GIBC)の不動産市場調査担当ディレクター、フイン・フオック・ギア氏は、不動産市場の需給は依然として感染流行の進展によって直接影響を受けると指摘し 、「 早期の回復を期待するのはかなり早い 」と楽観を戒めた。
出典: NNA