ベトナムは、その豊かな文化、美しい自然、そして活気ある経済で、日本の旅行者やビジネスパーソンにとって常に魅力的な渡航先です。しかし、渡航を計画する上で最も重要なのがビザ(査証)の規定を正しく理解することです。
「日本人はベトナム入国にビザが必要なの?」「45日以上滞在するにはどうすればいい?」「仕事で行く場合のビザは?」
この記事では、そうした疑問にすべてお答えするため、2025年現在の最新情報に基づき、日本人向けのベトナムビザ制度について、あらゆる側面から徹底的に解説します。

1. 日本人はベトナム入国にビザが必要?-「ビザ免除措置」を理解する
まず最も重要な点として、短期の渡航であれば、ほとんどの場合、日本国籍の方はベトナム入国にビザは必要ありません。
ベトナム政府は、日本を含むいくつかの国籍を対象に、一方的なビザ免除措置を実施しています。その内容は以下の通りです。
- 最大滞在期間: 45日間(入国日を1日目として計算)
- 入国目的: 観光、親族訪問、短期の商用・業務など、目的を問わない。
- パスポートの要件: 入国時点で6ヶ月以上の残存有効期間があること。
- その他の要件: ベトナムの法律に基づき、入国が禁止されている人物でないこと。
**結論として、あなたが日本国籍で、ベトナムでの滞在が45日以内であれば、事前のビザ申請は一切不要です。**有効なパスポートを持って、そのままベトナムへ入国することができます。
2. 45日を超えて滞在する場合の主要なベトナムビザの種類
もし45日を超えてベトナムに滞在する場合や、就労や投資といった特定の目的で入国する場合は、目的に合ったビザを事前に取得する必要があります。ここでは、日本人が利用する主要なビザの種類を解説します。
a. 電子ビザ(E-visa – 記号:DL)

ビザ免除期間を超えて滞在したい旅行者にとって、最も一般的で便利な選択肢です。
- 有効期間: 最大90日間。
- 入国回数: **1回(シングル)または数次(マルチプル)**を選択可能。
- 申請手続き:
- ベトナム出入国管理局の公式電子ビザ申請ポータルサイトにアクセスします。
- 個人情報、パスポート情報などを入力し、顔写真(国際基準のもの)とパスポートの写真ページをアップロードします。
- 申請料金(シングルで25USドル、マルチプルで50USドル程度)をオンラインで支払います。
- 通常3〜5営業日後に、結果がメールで通知されます。発行されたE-visaのPDFファイルを印刷し、入国時に提示します。
b. 企業・商用ビザ(記号:DN1, DN2)
ベトナム国内の企業や団体と業務を行うために渡航する方向けのビザです。
- 必須条件: ベトナム国内の企業・団体による**招聘(しょうへい)**が必要です。
- 申請手続き:
- ベトナム側の招聘企業が、ベトナム出入国管理局に申請し、**「招聘状(Công văn nhập cảnh / Approval Letter)」**を取得します。
- 招聘状が発行されたら、その許可番号を使って、在日ベトナム大使館・総領事館でビザを受け取るか、ベトナムの国際空港到着時に「アライバルビザ(Visa on Arrival)」としてビザの発給を受けることができます。
- 有効期間: 最大12ヶ月。
c. 労働ビザ(記号:LĐ1, LĐ2)

ベトナムで公式に、かつ長期的に就労するためのビザです。
- 必須条件: ベトナムの管轄当局から発行された**「労働許可証(ワークパーミット / Work Permit)」**または労働許可証免除証明書が必要です。
- 申請手続き: 企業・商用ビザと同様に、雇用主となる企業が招聘状を事前に取得する必要があります。
- 有効期間: 最大2年間。
- 関連制度: 労働ビザを取得した方は、同等の有効期間を持つ**「一時滞在許可証(レジデンスカード / Temporary Residence Card – TRC)」**を申請する資格が得られます。
d. 投資家ビザ(記号:ĐT1, ĐT2, ĐT3, ĐT4)
ベトナムで投資を行う外国人投資家や、外国投資組織の代表者向けのビザです。
- 特徴: ビザの有効期間は、投資額によって異なります。
- ĐT1(最大10年): 1,000億VND以上の投資。
- ĐT2(最大5年): 500億VND〜1,000億VND未満の投資。
- ĐT3(最大3年): 30億VND〜500億VND未満の投資。
- ĐT4(最大12ヶ月): 30億VND未満の投資。
- 申請手続き: ベトナムでの投資活動を証明する書類(投資登録証明書など)が必要となります。
e. 家族・帯同ビザ(記号:TT)
労働ビザ(LĐ1, LĐ2)や投資家ビザ(ĐT1, ĐT2, ĐT3)などを取得した外国人の配偶者や18歳未満の子供向けのビザです。
- 必須条件: 家族関係を証明する書類(婚姻証明書、出生証明書など)が必要で、これらの書類は事前に日本の外務省および在日ベトナム大使館での「領事認証」が必要です。
- 有効期間: 最大12ヶ月。このビザでも一時滞在許可証(TRC)の申請が可能です。
3. 基本的なベトナムビザの申請プロセス
どの種類のビザを申請するにしても、一般的なプロセスは以下の通りです。
- ステップ1:ビザ種類の特定 自身の渡航目的と滞在期間に基づき、最適なビザの種類(E-visa, DN, LĐなど)を決定します。
- ステップ2:必要書類の準備
- パスポート原本(十分な残存有効期間があるもの)
- 証明写真(4x6cmなど、規定サイズのもの)
- ビザ申請書(規定フォーム)
- (企業・労働・投資ビザの場合) ベトナムの招聘元が取得した「招聘状」
- その他、ビザの種類に応じた補足書類(労働許可証、投資証明書など)
- ステップ3:申請と受領
- E-visaの場合: オンラインの公式ポータルサイトから直接申請します。
- 日本で申請する場合: 東京の在日ベトナム大使館、または大阪・福岡の総領事館に必要書類を持参または郵送して申請します。
- アライバルビザの場合: 事前に取得した「招聘状」を持ってベトナムの国際空港(ノイバイ、タンソンニャット、ダナンなど)へ向かい、到着時に空港内の「Visa on Arrival」カウンターでビザの発給手続きを行います。

4. よくある質問(FAQ)
Q1:45日間のビザ免除期間を、ベトナム国内で延長することはできますか?
A1: 現行の規定では、ビザ免除資格での滞在期間をベトナム国内で延長することは**原則としてできません。**一度ベトナムを出国する必要があります。ただし、以前存在した「出国後30日間は再入国不可」というルールは撤廃されたため、出国後すぐに再入国し、新たに45日間の滞在資格を得ることは可能です。
Q2:90日間のE-visaを、ベトナム国内で延長することはできますか?
A2: E-visaの国内での延長は、手続きが非常に複雑であり、必ずしも許可されるとは限りません。当局は、E-visaの有効期間を遵守することを推奨しています。もし当初から90日以上の滞在を計画している場合は、可能であれば初めから企業ビザなど、他の長期ビザを検討するのが賢明です。
Q3:「招聘状(Công văn nhập cảnh)」とは何ですか?
A3: ベトナムの出入国管理局が、ベトナム国内の企業や個人の申請に基づき、「特定の外国人がベトナムに入国し、指定の場所(空港または在外公館)でビザを受け取ることを許可する」という趣旨で発行する公式な許可書です。企業ビザや労働ビザなど、多くの長期ビザ申請において、この書類が前提条件となります。

Q4:「一時滞在許可証(TRC)」とは何ですか?誰が申請できますか?
A4: 一時滞在許可証(Temporary Residence Card)は、ビザに代わる長期滞在許可証です。これがあれば、有効期間内はビザなしで自由に出入国できます。主に、労働ビザ(LĐ1, LĐ2)、投資家ビザ(ĐT1, ĐT2, ĐT3)、または帯同ビザ(TT)を保有する外国人が、同等の有効期間(最大10年)を持つTRCを申請する資格があります。

【重要事項】 出入国管理やビザに関する規定は、予告なく変更される可能性があります。渡航を計画する際は、必ず事前に在日ベトナム社会主義共和国大使館の公式ウェブサイトなどで最新の情報を確認するようにしてください。
Website: https://vnembassy-jp.org/ja

